Linuxでの縦書き(写植)ガイド【2015年】

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概要

メインのデスクトップPCではLinuxMintを使っている。
趣味でイラストを描くためにも用いているが、マンガのような縦書きを行うにはハードルが高い。
自分が縦書きを行うために調べた経験を改めてまとめる。





マンガを描くためにほとんどのユーザはWindowsを使っている。
画像編集であればPhotoshopが有名。
パスツールはマシンパワーが貧弱だった00年代に強力だった。

日本は独自のマンガ文化を発展させてきたため、国産のソフトが充分な機能を持っている。
CLIP Studio、Saiといったソフトウェアは代表と言ってもいいだろう。

前提

いつものようにLinux環境で実現可能なもの。
仮想マシンは化石な自作PCだとつらいので使用しない。
(というかWindowsを呼び出すなら別のHDDに入ってるWin7を使えばいい)

環境はLinuxMint17、および17.2(Cinnamon) 32bit版。
GIMPはプリインストールされた2.8.10。

Linuxでの選択肢 - Krita


Kritaについて知ったのは2015年の1月だ。
バージョンは2.8で日本語には対応していなかったが、最近の流行りを感じさせる黒のUIを採用していることが決まり手だった。

ドローソフトがどういった機能をもっているのかということは知っていたため、
メニューの英単語から推測して操作を覚えることはできた。
操作方法の記事を書いてた頃が懐かしい

しかし、本記事のテーマでもある縦書きについては、貧弱どころか非対応だった。
Linux(というかコンピュータ分野)は海外発で、ユーザの母語もほとんどが横書きだ。

大企業のビジネスでもなければ、外国産のソフトウェアに縦書き機能を求めるのは諦めたほうがいいだろう。

Linuxでの選択肢 - GIMP


GIMPは画像編集ソフト(Photoshopキラー)として有名だ。
機能は優秀だが、ドローソフトには一歩劣る。

それでも、絵とテキストをわけて考えるなら可能性はあった。
幸い、GIMPにプラグインを追加することで縦書きは実現できる。
写植の加工も「不透明部分の選択」で縁取りを簡単に行える。

プラグインの入手と導入

GIMPでの縦書きについての記事は2009年頃から出てきたようだ。
この中で「縦書きふ〜」というプラグインで縦書きを実現できた。

実はこのプラグイン、改良版が公開されている。
これらについても解説する。

1.おそらく最初のスクリプト

他のブログ記事の内容を先に試したため、このスクリプトは使ってない。



2.改良されたスクリプト(ファイル名:tategaki-fu.scm)



少し設定をいじるとエラーを吐いたり、実行されなくなる。
具体的には、テキスト入力中に表示される小さいウィンドウ(エディターウィンドウ?)でフォントやサイズを変更するとスクリプトを実行してもエラー、もしくは何も起こらない。(図1)



図1.入力したテキストと、その上に表示される小さいウィンドウ
これを回避するためには、使いたいフォントやサイズをツールボックス(図1の画像左側)で予め指定しておけばいい。
このスクリプトで一度エラーが発生するとGIMPを再起動する必要があったため、この方法を探すには苦労した。

縦書きにしたいテキストを選択状態にし、メニューバーに追加された「Script-Fu」→「縦書きふ〜」を実行するとルビなどを設定するウィンドウが表示される。
そして「OK」ボタンで実行。

注意点は、

  • 入力した文字数が多いほど処理に時間がかかる
  • 一部の文字で縦書き仕様にならない場合がある(「〜」など)
  • スペースや文字のない改行は無視される
  • 縦書きに変換するとラスタライズ(画像化)されるため、誤字などの修正をするには入力からやり直す必要がある

成功するとラスタライズされたテキストが画像の左上に表示される。(図2)

図2.縦書きになったテキストが画像の左上に表示されている

あとは回転ツールや移動ツールを使って仕上げればいい。

3.自動化されたスクリプト(3つのファイル)



参考記事の解説が優秀だったので特に書くことはない。

ただ、実行してみて、縦書きにしたテキストがレイヤーの縦幅を超える場合に透明部分が拡張されることに気がついた。
もうひとつ、同じフォントを使ったが、こちらは英字も縦に並んでいる。(図3)

図3.画像の下部分が拡張され透明になっている

さいごに

こうしてガイドを書くにあたって裏付けをとって気がついたのだが、私は2番と3番のプラグインが混在し、ずっと2番で紹介したプラグインを使っていた。
記事を書きながらこうした発見ができることはうれしい。


大学の後輩が「宛名を縦書きで印刷するためにLinuxでどこまでできるか」を実験したらしいが、結果は芳(かんば)しくなかったらしい。
LibreOfficeもそうだが、縦書き機能が貧弱ということは、いかに日本でLinuxが普及していないかということを実感させられる。


導入した当時は、「縦書きふ〜」とGoogle検索に入力すると「縦書き」で解釈されるので探すのが大変だった。
「tategaki」も「縦書き」で解釈される……。
ファイル(スクリプト)名をローマ字にするのは良くないのかもしれない。


挿入した画像ではフォント「やさしさアンチック」を使用している。
TTF形式なのでLinuxにも導入可能。
さぁ、みんなもLinuxで絵を描いて写植をしよう!(変態)